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卯月妙子「人間仮免中つづき」

 卯月妙子さんには何度かお会いしたことがある。初対面でインタビューさせていただいた、はず(記憶が曖昧)。実録企画モノが出版された後だから2000年以降のはず。そのあと、何度かイベント会場などでお見掛けしてご挨拶した程度。綺麗な人だな、と思った。ただ実録企画モノは読んでいるし、そもそも卯月さんを最初に見たのはスカトロのAVでメチャクチャにハードなプレイをする人って印象なので美よりもその禍々しさが強かった。名刺を渡したからだろう。ある日、自宅に卯月さんの同人誌が郵送で届いて、同封されて手紙が何度読んでも、どこか辻褄が合わないし、何をいってるかわからない部分があったので返事をしないでいた。精神的に不安定なところがある方だというのは人伝に聞いていたのでまあそういうことかなと思って。
 当時、卯月さんはホームページをやっていて、そこの日記も日増しになんだかわからない内容で、時たま攻撃的な長文が大量にアップされていた。それからしばらくしてから、彼女は舞台上で自殺未遂をした。
 その後もなんかいろいろあって。何年かに一回、名前を思い出す。こちらはそんなに親しいわけじゃないけどとにかく心配で、
「無事であって」と思っていた。
人間仮免中」は2012年、自分も諸事情から四六時中寝てばかりの、半ば廃人の時に読んだ。友人から「とにかくすごいから読め」といわれて。
 歩道橋から飛び降りて大怪我したって話はショックだったし、統合失調症の幻覚から卯月さんが壊れていく様子がエッセイ漫画として描かれているのがとてつもなく怖かった。でも新しい恋人ができて、まあとりあえずよかった、と思えた。
 それからまあこっちはこっちでいろいろあって。廃人同様だった自分もやっと調子が取り戻ってきた。そんなときに「人間仮免中つづき」が出た。
 描かれてるのは恋人との愛。家族、友人との結びつき。情け容赦なくやってくる統合失調症の幻覚。試練。そして震災、などが描かれている。読んで感動して、そして異常なほど疲れた。作中の苦しみが痛々しくて瑞々しくて、軽く読めるものではなかった。素晴らしい本なんだけど、多くの人の目に触れるのはどうなんだろう。でも印税で卯月さんには穏やかに暮らしてほしいと思うので売れてほしい。そういう矛盾した気持ち。うまく説明できないんだけど、やっぱり自分の親しい人には読んでもらいたい。この気持ちを共有したい。この作品で、孤独、理解されない状況っていうのが一番地獄だって確認できたから。そして人間はつらいことを言葉にして、作品にして、いやここでいう作品っていうのは狭義の作家と作品って意味じゃなくて、人間の生きた証みたいなもんとして、そういうものを作って、悲しいことを昇華させていくんだなと。
 多分、卯月さんはこっちのことなんて覚えてないだろうし、もうお会いすることもないだろうけど、応援してるし、こっちもこっちでこの作品で応援されてるような気持ちになれた。
 ありがとうございます。
人間仮免中つづき」。やっぱりみんな読んでください。
 あと余計なお世話ですが帯文でちょっと驚くようなネタバレがあるんで書店で見つけたら即、購入してブックカバーをつけることをおすすめします。